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| 「探偵」という職業名を知らない人はほどんどいないでしょうが、その一方で「探偵」という仕事について正しく理解している人も、ほとんどいないことでしょう。 |
初対面の人に自分は探偵をやっています、と名乗ったら、ほとんどは『えっ?意外と普通に見えますね』という反応が戻ってきます。
一般の人たちがどんな探偵をイメージしていたのかは分かりませんが、本物の探偵というのは非常に地味で、格好悪く、おまけに不規則な仕事です。その割に求人すれば大勢の人間が殺到するあたり、テレビや小説などが与えた影響の大きさを感じずにはいられません。
それほど人気のある「探偵」という職業ですが、間違ったイメージを持って探偵になった人は、やはり地味で辛い仕事に絶えられず長続きしません。うちの場合も中途半端な気持ちで入ってきた調査員をいきなり実際の現場に連れて行くわけにはいきませんから、入社のさいには、過酷な試験があります。たとえば一日10時間以上の立ち張り(立ったままの張り込み)をやらせて適性を測ろうとするのですが、やはりこれは相当きついらしく、大半の人間が耐えられなくなります。うちとしても別に意地悪をしている訳でなく、最低限それだけの体力と精神力がなければプロの探偵は勤まらないことを経験的に知っているからなのです。
もちろん試験をクリアしても、むしろ大変なのはそこから先です。炎天下や極寒の中での張り込みは過酷そのものです。目張りをした車の中で息を潜めて、8時間以上じっとしているのは、体力も精神力も相当に削られる作業です。住宅地での張り込みは住民からの視線に耐えねばなりませんし、警察まで呼ばれると事情説明に苦労します(もちろん依頼に関することは死んでも話しませんが)。
これらの様々な困難に立ち向かえる人間というのは、なかなか採用面接だけで見分けることはできません。「どんなにキツくても頑張ります!」と面接時に言っていた人間ほど、あっさりリタイアしてしまうのだから不思議なものです。忍耐が何よりも大切なのは探偵の世界でも同じこと。忍耐がなければ調査で手を抜く、サボる、報告書をいい加減に書く、決められた仕事を最後までやりとおせないなど、仕事上、まったく良いことはありません。
さて、ここまで色々とキツいことを書いてきたので、「そんなに辛いのなら、どうして探偵なんかやってるのか?」と思われることでしょう。確かに探偵という仕事には報われない面も少なくありません。しかし、これほど多くの貴重な経験を積める職業というのが他に見当たらないのも事実です。テレビや小説の中でしか見られないような出来事が実際に自分の目の前で展開される訳です。依頼者・対象者を巻き込んだ雑多な人間関係の中で揉まれていくうちに、自然と「人を見る目」も養われていきます。実戦経験を積んでいけば度胸と体力も相当に鍛えられます。依頼の中には一つとして同じ調査がなく、およそ退屈という言葉とは無縁の日々を過ごすことができます。他にも探偵をやることによって得られるものは非常に多く、数々の困難に耐えられる人にとっては、普通のサラリーマンをやるより遥かに面白い仕事だと思えてきます。
一度しかない人生で色々な経験をしてみたいという人、常に好奇心と向上心あふれる人、多少の困難には負けずに自分の能力をフルに試してみたい人。‥‥そんな人は、「職業」としての探偵を本気で考えてみるのも面白いかもしれません。
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